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「あなたはだぁれ?」

 何度も呪文のように繰り返し 問いかける言葉。 その都度、困ったような空気が流れるのを感じる。

 私は目が見えない。 生まれつきではないけど、エトワールになるのを夢見ていた頃。運悪く 母の扇が目に当たり、方目を失明した。

 失明したのは片目だったけど、私の無事だった目もどんどんと視力が落ちていった。 今はほどんと何も見えない・・・

 エトワールを目指していた私からすると、視力を失うという事は エトワールになる事も諦めるという事だけど、光をうしなってからの方が 目が見えている時には見えていなかったものが 見えるようになったように感じる。

 だからかな? 自分の死期が近い事も何となく悟った。

 母が私を疎ましく感じている事を 私はずっと知っていたのかもしれない。 私に女の悪魔の名前、リリスと命名した母。それでもずっとその事に気付かない振りをしてきた。だって生みの母に忌み嫌われているなんて・・・子供は無条件に母親の愛を与えられるものなのに・・・私は・・・それすらも与えて貰えないなんて あまりに自分が惨めだから。

 母は 花形エトワールだった。 でも私達を身籠り、そのエトワールである事を断念せざるを得なくなった。 そんな母からしたら 私達をみるのは辛かったのかもしれない。嫌でも私達をみれば、私達のせいでバレエを踊れなくなったと感じるから。

 私は 母の替わりにエトワールになりたかった。 母の夢を叶えたかった・・・バレエを踊る事だけが、兄と私を母と結びつけるもののように感じていたから。母の果たせなかった夢を実現したかった。・・・今考えると とても子供じみた考えだったけど・・・あの頃はそう考えたいた。 母に振り向いて欲しかった。

 兄と私は ひたすらに踊った。無心に踊った。

 そして1つの作品を作り上げた。

 
 “光の パッ・ドゥ・トロワ”

 
 「あなたは だぁれ?」

 何度も呪文のように繰り返し 問いかける言葉。 その都度困ったような空気が流れる。

 視力を失いつつある私には その人の顔は どんなに私の近くにいてもボヤけてしまって見えないけど。

 視力を失い、見えないものが見えるようになって、私はこの街から姿を消した。 その方がいいと思ったから。

 どん底の生活が私を待っていたけれど、私は幸せだった。体は穢れても、世俗の欲にまみれても、心は澄んで穏やかだった。

 けれど、死を予感し、死を前にして 私はまた母と兄がいるこの街に戻ってきた。 母と兄に 逢いたい・・・と思ったから。

 今の自分の体を考えると、母と兄のいる場所までたどり着けるかどうか分からなかったけど、母と兄に逢いたかった。

 案の定 行き倒れになり、そして運よく この教会にお世話になる事ができ、私はまだ生きている。

 そして ここでこの人に出逢った。 

 私にはこの人の顔は分からない。でもこの人を感じる事は出来る。

 魂が震えているのが分かる。 悲しみに絶望に。愛されたいと餓えている魂が見える。

 私は この人を抱きしめてあげたいと思った。 その震える孤独な魂ごと 抱擁してあげたいと思った。

 この人は 私が苦しそうにしていると、決まって私の手にそっと自分の手を置く。 すると不思議な事に私の苦しみが消える。

 とてもひんやりとして冷たい手だけれど、癒しの手を持つ優しい人。

 死を前にして、いえ・・・死を前にしたからこそ 分かった事がある。 人を愛する事。愛されたいと思うなら、まず自分が愛さなくてはいけないんだ・・・
 
 そんな些細な事の意味がやっと理解できたような気がする。

 私は 母を愛している、兄を愛している。そして神を愛している。

 母が私をどう想っていようと 神が私をどう想っていようと、私は母を愛している。神を愛している。

 母にも神にも誰からも 愛されなかったかもしれない・・・でも私は愛している。

 その事にやっと気付けた。

 気付けた今、私はこんなにも穏やかな気持ちになれた 満たされた気持ちになれた。死をも穏やかに受け入れる事ができた・・・

 だから この人に その事を伝えたい。 愛されるには まず自分が愛さなくては・・・・と。許さなくては・・・と。

 「あなたはだぁれ?」

 何度も呪文のように繰り返し 問いかける言葉。 その都度困ったような空気が流れる。

 もう・・・あまり地上にいられる時間が少なくなってきているみたい・・・

 まさかそんな時に こんな大きな喜びに出会えるなんて思ってもみなかった。

 兄に逢えた。 見えなくても懐かしい雰囲気、香り、懐かしい抱擁・・・

 そして・・・母がいる。感じる。そこに母がいる事を・・・

 私は兄の耳元でそっと囁く。

 母を許してあげて・・・私たちをどう愛していいのか分からなかった 可哀相な人だから・・・と。

 私は 肉体を失くしたら 何処へ行くのかしら? 神様に愛されなかったから・・・天国へは受け入れてもらえないかしら・・・

 意識が遠のき・・・命の火が消えるのが分かる・・・

 と、その時、今まで暗闇の中に生きてきた 私の目の前に広がるのは 光・・・圧倒的な光・・・神々しいまでの圧倒的な光・・・

 眩しい光の中に誰かがいるのが見える・・・私は眩しさに目を細めながらその人を見つめる。

 私はあの人を知っている。

 あの人だ・・・私が「あなたはだぁれ?」と何度も呪文のように繰り返し問いかけた人。

 その人はとても美しい人だった。 神々しい光の中にいる姿は神そのもののよう。

 やっぱりあの人は天使さまだったのね。 私は神様に愛されていない訳ではないのね・・・

 私は踊る。 もう・・・何年も踊っていない・・・私は綺麗に踊れているだろうか?

 天使さまのステップに合わせて踊る。

 私はこのステップを知っている。

 これは・・・・

 “光の パッ・ドゥ・トロワ”

 母の為に 兄と私が作った作品

 私は 幸せだったわ。最後にはこうして 天使さまと出会えたし。
 
 あなたは私を救ってくれるのですね。

 私の為に道を示してくれるのですね。

 私は あの道を行けばいいのですね。

 ただ信じてひたすらに真っ直ぐと あの道を行けばいいのですね。

 天使さまは ゆかれないのですか? あっ・・・今はまだ 時ではないのですね? まだまだ救わなくてはならない人達が この世にたくさんいらっしゃるのですね。

 では 私は あなたが示す道の先にある地で、あなたを待ちましょう。

 またいつの日か、“光の パッ・ドゥ・トロワ”を踊る日まで・・・

 ずっとずっとあなたを待っています。

 堕天使の名、ルシファーの名を持つ天使のあなたを。
 

 リリスはルシファーにとって 救済者だったというのなら・・・また リリスにとってもルシファーは救済者だったのではないか・・・という視点で 妄想してみました。

 ある人にとったら 堕天使なのかもしれませんが、ある人からしたら 天使だったんですよ。

 見方を変えられれば、人は幸せになれるっていう事なんですかねぇ。(笑)
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